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雁木通りのいえ

KTOTO. 01.2022

クライアントの祖母が暮らしていた土地に孫夫婦と子5人が暮らす住宅。敷地は京都市内にありながらも南側に田や畑が残り心地よい光と風が豊かな環境を作り出していた。既存の状態では、道路から田や畑がある事が分からないほど南面に対して閉鎖的であった為、道路から南側へ流れる風、光、空気を設計すべきであると考えた。景観の規制から大きく軒を出す必要があった為、必然的に生じる建物と隣地の隙間を、奥へ続く抜けのある通り土間を計画。直接道路からアクセス出来る室内と連続するテラスを設ける事で、来客の多いこの住まいに多様な人が集う外部の居場所を作った。
また、建物中央に間口2間で水回り等の住空間を最小限にまとめ、東に2,275mm延長するように迫り出した軒下空間を、道路と田を結ぶ南北に抜けのある雁木通りのような土間空間とした。家族や友人、仕事仲間も入りやすい2層吹抜けの南北に抜けのある雁木土間は、玄関、リビングとして利用出来、打合せや作業等の仕事場としても、子どもが走り回り、日向ぼっこも出来る憩いのスペースにもなる。この空間は、起業家でさまざまな人と関わりながら日々活発に仕事をされている夫婦の住まい(拠点)の骨格である。建物中央にまとめた住空間を間仕切る本棚収納は2F床も支える。本棚収納によって奥行きが生まれ、水回り等の内部空間では洞窟のように落ち着き、雁木土間やリビングでは住まい手に気兼ねなく活動的に利用できる空間となった。
また7人家族だが、個人に個室を割り当てず、大きなスペースと、受験時や思春期などに一次的に籠る事ができる小さなスペースやワークスペースを配置した。
家族が時期や時間に合わして住まい全体を常に利用する事で、各々が心地よい居場所を模索、発見しながら暮らしていく姿を想像した。打合せを重ねる中で、常に仕事をしているようで、常に遊び、多様な人と関わる仕事と5人の子供との暮らしから、新たな発見や可能性を見つけ出し、毎日を精一杯過ごされている姿がとても眩しく、暮らしと仕事は常に繋がり一体的であると改めて実感した。
住宅という建築であっても、職と暮らしを一体的に繋げながら、多様に変化する住まいを目指した。

設計
建築設計事務所SAI工房 / 斉藤智士
構造設計
有限会社ワークショップ 安江 一平
施工
株式会社池正
撮影
山内 紀人
設計期間
2020年8月〜2021年2月
施工期間
2021年2月〜2021年10月
構造
木造
敷地面積
180.30㎡
建築面積
89.98㎡
延床面積
130.45㎡