OSAKA. 03.2023
計画地は、大阪では住宅街としても広く知られる茨木市に位置する。四方を建物に囲まれた環境ではあるが、敷地南側の一角には、祖母が大切に育ててきた小さな庭木が複数ある。これらの暮らしの風景を引き継ぎながら、孫家族が新たな生活を営む為の住宅を計画した。
クライアントの要望の中で特に印象的だったのは、大きな玄関や無駄な廊下が好きだという事。その上で極力コンパクトにして欲しいとの事だった。そこで、家族が集う家族室を中央に配置し、取り囲むように廊下兼用の収納やワークスペース、個室コーナー、外室、中庭を配置する。この絡まり付く廻廊空間(廻間)の先に、庭・隣家へと連続させる。中央の家族室から徐々に外部へと滲み出していくようであり、家族室を”廻間”が支えるような構成とした。
この家族室に絡まり付く廻間は、腰壁、垂れ壁、段差、家具を操作する事で作り出し、ワンルーム空間の中に多様な居場所を与え、暮らしを支える。家族室には、存在感のある太く長い柱を落とすことで、中心性を持たせ、棟木、稜線の梁を支えている。稜線の梁は5mを超える大きなスパンとなる為、垂れ壁から32Φの丸鋼を突き刺すような形で鉛直荷重のみ支える構造とし、廻間と家族室が大きな屋根で包み込まれる一体性を、屋根架構から作り出している。また、段差を設け、家族室を道路レベルから約1.3mの高さを確保する事で、浸水対策も兼ねている。その上で、家族室から徐々に外部へと段差を解消しながら、垂れ壁や開口部をデザインすることで、周囲の民家との視線を制御し、廻間が暮らしを支える構成となる。透明の屋根で包まれた外室は、カメラマンであるクライアントのフォトスタジオとしても活用出来るよう、外部に拡張しながら祖母が残した庭木と連続し、暮らしに彩りを与える。
一つの大きな空間の中に、絡まり付く廻間があることで、小さな居場所、多様なシークエンス、豊かな暮らしの生み出し、住環境の制御をも可能としている。家族という一つの単位の先に、個人を敬い、各々が暮らしを営みながら、家族として、社会の一部として、快適で豊かな暮らしを享受出来る住まいを目指した。