GUNMA. 10.2023
計画地は群馬県高崎市で、ポツポツと民家が建ち並ぶ、とても静かな郊外地である。敷地の西側には、2.5mほど下がった先に、水路と遊歩道があり、南東から西にかけて雑林が広がる。この土地に夫婦と子ども1人が暮らし、住みながら更新・成長していけるような住まいを希望された。そこで、高崎市特有の群馬・新潟県境の山々より吹き下ろす「上州からっ風」や、雑林の落ち葉・木の実などから住まいを守るような、三角の住まいを提案した。要素を簡素化し、床と屋根だけで成り立つテントのような建築を作り、自然環境へ呼応するように、周囲を徐々に開拓していくような佇まいを目指す。東西方向に流れる切妻屋根とし、地面近くまで屋根を下げることで、西日を調整する。さらに急勾配の軒下から連続するように開口を設け、視線を地続きに連続させる。筒状に抜けが生まれる三角形の断面が、視線・動線を奥へ奥へと導き、豊かな外部環境へ繋がる。方向性の強い断面形態であるからこそ、逆方向に閉鎖的になりやすい為、多様な開口の設計を行った。まず、平面的に2つのボリュームを繋げることで、新たな軸を加えた。さらに筒状の先端にのみ開口部を設けるだけでは無く、屋根の一部をめくり上げることで、外部との接点を作り出した。断面から生まれる強い空間の広がりと、多様なシークエンスを作り出す平面配置・捻り屋根が、幾何学的な形態から自然の中で、人の営みに寄り添う住まいとなる。構造は、基礎立ち上がりを少し高く設定し、その上に、流通材として一般的な実長4m以下の登り梁を合掌の形で組み上げ、構造用合板で固める。短辺方向に生じるスラストは、基礎壁に直接力を伝達することで対応している。また、捻り屋根を生み出す為に柱を立てたスパンに対しては、ロフト床と、三角形の開口部をトラスとして活用することで対応している。さらに、2つのボリュームの接点で、屋根が捻りながら結合する複雑さ・納まり・施工性を考慮し、鉄骨の柱およびFBを登り梁として一部採用することで、スムーズに連続する屋根架構を実現している。この基礎と屋根だけの構成をインテリアとしても利用し、上棟時にほぼ完成であるようなデザインに落とし込んでいる。内装工事としては、多少の間仕切・設備を設えるだけに絞り込み、工期短縮とコストカットに繋げている。また、分かりやすい構成・構造である為、塗装や棚等の家具をセルフビルドで仕上げ、住みながら更新、成長する計画としている。「木と木を組み上げ内部に空間を作る」という簡素化された原初的な住まいによって、人が建築・自然と向き合い、工夫しながら暮らす原型的な風景を生み出すのでは無いかと考えた。