Kagawa. 06.2023
敷地は香川県、山並みを背にしながら、東側には広大な田園風景がひらける豊かな環境に位置する。 敷地内には既存の母屋があり、その北側に娘夫婦のためのコンパクトな住まいを計画するにあたり、周囲の風景と母屋の佇まいを継承しながら、次世代にふさわしい小さな居場所の構造をつくることを目指した。 母屋は平屋で、方形屋根を変形させたような特徴的な屋根をもっていた。そこで、高さを抑えた水平性と方形屋根のプロポーション、さらに白い屋根という要素を抽出し、新しい住宅の形式へと翻訳した。白い方形屋根は、山と田園のあいだに浮かび、母屋との連続性を保ちながら、敷地全体の風景の基調を静かに更新している。 住まいは、中央に水回りや構造体をまとめたコアを配置し、その周囲にキッチン、ダイニング、リビング、寝室を回遊動線でつないだ。小さな住宅でありながら、どこにいても風景が抜け、行為が連続していく。コア上部の小さな2階は、サブリビングや子ども室、ワークスペースなど多様な使い方に開かれた余白として計画した。吹抜けを介して1階とゆるやかにつながり、家族の変化に応じてフレキシブルに更新できる場所である。 母屋と新しい住まいが風景の中に寄り添いながら共存すること。必要以上に大きな家をつくらず、将来の母屋の活用も視野に入れたちょうどよい住まいを目指した。