WORKS

Canopy

Osaka. 12.2025

敷地は大阪府箕面市、箕面山の麓に位置する。南には大阪市街の眺望が広がり、北には山並みが迫る、都市と自然のあわいにある環境に建つ住まいである。 約 75 坪の敷地の中に、建築の骨格として一本の道を引き込んだ。この道は単なる動線ではなく、家族や近隣の人々が行き交い、立ち止まり、滞在することを許容する生活の余白とする。その上部には、意図的に住宅のスケールを超えた 4m 弱の天井高さをもつキャノピーを架けた。柱を道上に一切落とさず、木造の大屋根から C チャンネ ルを抱き合わせた鉄骨部材を2730mm ピッチで吊り下げる構造とし、合理性と開放性を両立させている。天井高をスケールアウトさせたこの半屋外空間は、敷地の中に道としての公共的性格を宿しながら、同時に住空間の延長として、人の行為を誘発する。人が集い、時間とともに使われ方が変化していく領域である。 また、キャノピーをもつ道と呼応するような間口をもつ住空間を並置し、両者が互いに反転しうる関係をつくる。 使われ方や知覚の方向が揺らぎ、建築の重心が絶えず変容していくあり方を意図した配置である。 内部空間では、明確な間仕切りや用途の規定を排除し、家族の行為や時間の変化を包摂する大らかな場として構成した。構造的リズムである 2730mm ピッチは、室内における見えない秩序の基準となり、生活のリズムや行為のスケールを静かに導いている。キャノピーは 2 階床より約 90cm高い位置に設け、南面の連続する大開口か らは住宅街の視線をかわしつつ、大阪市街の眺望を取り込む装置となる。キャノピー上部は、空の道のような細長いテラスとなり、視線を下げれば、敷地に引き込んだ地上の道の活動が見える。地上と空中の二重の道が、上下方向に開かれた新しい居場所を形成した。 このキャノピーを持つ道は、車社会の進展とともに失われつつある路上の社交性を、一つの住宅地のスケールの中に再構築する試みである。道路のように開かれながら、住まいに親密である空間。スケール操作と構造的合理性によって、開放性と包容性、個と公共のあいだに新たな関係を紡ぎ直す住まいである。

設計
建築設計事務所SAI工房 / 斉藤智士
構造
株式会社DIX / 辻拓也
施工
株式会社吉川工務店
撮影
山内 紀人
設計期間
2024年2月〜2025年1月
施工期間
2025年2月〜2025年12月
延床面積
143.50㎡